ヤミ金相手に民事訴訟を起こすことで、元本・利息はもちろん、慰謝料も請求することができます。ヤミ金には一円も返す必要はなく、慰謝料も取れるのです。
損害賠償請求訴訟の提起
「被害回復分配金」制度や「被害回復給付金支給手続き」による被害回復の手続きは、個々の被害者が裁判を起こさず、被害回復を図る制度ですが、もちろん、個々の被害者が民事裁判を起こす権利もあります。
被害回復分配金や被害回復給付金支給手続きによって回復される被害は、「財産的損害」です。
しかし闇金被害者は、財産的損害以外にも、精神的なダメージ、社会的なダメージ等さまざまな損害を受けているのが実状です。
これを回復させるために、「慰謝料」という形で解決を図ることもできます。
慰謝料を請求する場合は、民事訴訟を起こすことになります。
平成20年3月7日東京地裁の判決
東京地裁平成20年3月7日判決(「判例時報」2017号95頁、「判例タイムズ」1282号204頁)は、「資金を必要とする原告らの窮状に乗じて巧みに原告らを勧誘し、貸借取引という外形を整えた上で、多額の金員を支払わせてその窮状を悪化させた」ことによる精神的苦痛は長期に及ぶため、それに応じて本件店長らから受ける脅迫行為が増大するという事情が窺われ、また、貸借取引の金額が多額に上るほど、当該原告が返済の資金繰りに費やした精神的・時間的負担も多大となり、家族や親族をも巻き込んで、窮状を悪化させた度合いも高くなるという事情に加え、財産的損害の額、脅迫行為の内容及び原告らの窮状などの事情を総合考慮して、その慰謝料の額を財産的損害の三割と認定しました。
長い説明になりましたが、要するに被害者が民事訴訟を起こすことにより、「精神的苦痛による」慰謝料を勝ち取ることができた、という判決になります。
平成20年6月10日最高裁の判決
また、平成20年6月10日、最高裁が「ヤミ金が貸金名目で貸した元本も利息についてもいずれも違法であり、一円も返す必要がない」という旨の判決を下しました。
「反倫理的行為に該当する不法行為 の被害者が、これによって損害を被るとともに、当該反倫理的行為に係る給付を受けて利益を得た場合には、同利益については、加害者からの不当利得返還請求が許されないだけでなく、被害者からの不法行為に基づく損害賠償請求において損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として被害者の損害額から控除することは、民法708条の趣旨に反するものとして許されない」ことを明らかにした。そして、本件事案への適用判断について「著しく高利の貸付けという形をとって上告人らから元利金等の名目で違法に金員を取得し、多大の利益を得るという反倫理的行為に該当する不法行為の手段として・・・貸付けとしての金員が交付された・・・のであるから、上記の金員の交付によって上告人らが得た利益は、不法原因給付によって生じたものというべきであり、同利益を損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として上告人らの損害額から控除することは許されない」と述べた。
引用元:
上記判決のポイントとしては、
- ヤミ金は反倫理的不法行為である
- ヤミ金には元本返済不要
- 元本を控除せず全額を賠償すべし
- 違法金利分も返済不要
ということになります。
この一件は、画期的な判決として、消費者団体、被害者救済団体、弁護士会、司法書士会を含め、検察庁などの関係各省庁、法曹界全体を揺るがす判決となりました。
このように、訴訟を起こすことで、闇金から元本および利息あるいは慰謝料までも請求することが可能なのです。
民事訴訟により、ヤミ金融業者を訴えることは、被害者の当然の権利です。
司法もこれを支持していると言えます。
ただしこの場合「地裁」「最高裁」での裁判となりますので、これに限っては「弁護士」の力を借りることになります。
地方裁判所や最高裁判所での訴訟代理権は、弁護士にはありますが、司法書士にはありません。
地方裁判所・最高裁判所は、「弁護士の土俵」ということになりますので、訴訟を検討される場合は、弁護士に相談するようにしましょう。
以上、闇金被害を金銭的に解決するには、やはり弁護士などの専門家に相談して慎重にかつ確実に行うことが肝要です。
闇金被害者のみなさんが一日も早く、闇金被害から解放されることを願うばかりです。