ヤミ金被害を警察に相談してみることも問題解決の手段です。「取立規制違反」などは刑事事件ですので、警察に告発することができます。
違法な闇金を野放しにしてきた日本の警察
その存在から商売のやり方までが違法なヤミ金に対して、これまで警察はほとんど取り締まりらしい取り締まりをしてきませんでした。
これが、闇金被害を現在のように大きくしてしまった最大の原因です。
仮にヤミ金に引っかかってしまい、取立てがひどいと警察に訴えても「借りたカネは返すのが当たり前・・・」などといわれてしまいます。
ここで、特に強調しておきたいのは、「借りたカネは返すのが当たり前」というのは一般的な借金について当てはまることであって、闇金からの借金は全く事情が違うという点です。
これは警察だけではなく、世間一般の人たちにも同じような考え方が根強くあるようです。
「ヤミ金なんかから借りたのだから、自業自得でしょう」
といった、闇金被害者に対する厳しい声もよく耳にします。
しかし、これは大きな誤解なのです。
なるほど、友人から借金した、銀行から融資を受けたなどという場合は、借りたカネを返すのは当然でしょう。
ところが、ヤミ金の場合は、カネを貸すという行為自体が出資法に違反した違法な行為であり犯罪です。
ですから、闇金から「借りてしまった」人たちは被害者なのです。
こうした犯罪行為があれば、警察はただちに刑事事件として処理しなければならないはずです。
しかし、実際には「民事不介入の原則」をタテに、ヤミ金を厳しく取り締まってはきませんでした。
「民事不介入の原則」は、刑事事件については警察が出てきて処理しますが、民事事件については当事者間の問題なので警察は介入しないという原則です。
つまり、闇金の問題もカネの貸し借りという民事事件だから、警察は介入しないというのです。
しかし、これも間違っています。
確かに、問題が「カネを貸した」「カネを返せ」というだけなら民事事件といえるかもしれません。
しかし、闇金という違法業者が出資法に違反した犯罪行為を行っているわけですから、民事不介入の原則をタテに警察がヤミ金に関与しないという態度は間違っているのです。
他の先進国にヤミ金は存在しない
闇金問題に消極的な日本の警察の姿勢は、欧米の先進国から見れば特殊なケースです。
例えば、フランスでは「市中平均金利の3分の4倍を超える金利は無効である」という法律があって、これが借金の上限金利となっています。
この規定に違反した貸金業者には刑事罰が科されます。
そして、もし上限金利を超える金利で商売する貸金業者が現れると、すぐに警察が取り締まります。
ですから、フランスにはヤミ金は存在しないのです。
さらには、日本のように金利を規制する法律が二つもあったなどという曖昧さはなく、明確な上限金利の規定が存在しますから、消費者金融のようなグレーゾーンで商売しようとする貸金業者も存在しませんでした。
(現在の日本では、グレーゾーン金利は撤廃されています。)
日本の警察もヤミ金対策に積極的になりつつあるが・・・
日本の警察の姿勢も、ようやく2000年前後から、少しずつですが、変わりはじめています。
2001年には、警察庁が闇金問題に関連した通達を出しました。
その内容は
「闇金のような悪質な金融事件については、関係当局とも連絡を取って積極的に取り締まりなさい。刑事事件になりそうなものは積極的に取り上げなさい。」
というものです。
そして、2002年の4月には、警視庁のなかに「悪質金融事犯特別捜査本部」(警視庁生活経済課)が設置され、積極的に取り締まろうという方向に変わりつつあります。
ただし、末端の警察官のレベルになると、残念ながら依然として動きが鈍いというのが現状です。
彼らは、貸金業規制法や出資法などの法律についてあまり詳しくは知りません。
ヤミ金業者の方が逆に詳しいくらいです。
そのため、ヤミ金からの被害について訴えても、積極的に動いてくれないことも多いのです。
とはいえ、警察全体としては、闇金問題に積極的に取り組もうという動きが出てきているのは事実です。
特に暴力団絡みの事件については、取り締まりを強化しているようです。
実際、ここ数年のヤミ金の摘発件数は増えており、平成27年の闇金関連事犯の検挙事件数は「300件」を超えています。
しかし、被害額は年々増えており、被害状況から見れば少ないといえます。
統計:ヤミ金融事犯等の事犯別検挙状況(平成24~27年)
年次 | 24 | 25 | 26 | 27 | |||||
事犯別 | 事件数 | 人員 | 事件数 | 人員 | 事件数 | 人員 | 事件数 | 人員 | |
闇 金 融 事 犯 |
無登録・高金利事犯 | 190 | 315 | 168 | 337 | 151 | 258 | 140 | 267 |
闇金融関連事犯 | 135 | 155 | 173 | 186 | 271 | 300 | 302 | 341 | |
小計 | 325 | 450 | 341 | 523 | 422 | 558 | 442 | 608 | |
その他 | 0 | 0 | 1 | 1 | 4 | 12 | 2 | 2 | |
総数 | 325 | 470 | 342 | 524 | 426 | 570 | 444 | 640 |
注1:「無登録事犯」には貸金業法違反(無登録)を、「高金利事犯」には出資法違反(高金利)をそれぞれ計上している。
注2:「ヤミ金融関連事犯」には、貸金業に関連にした犯罪収益移転防止法違反、詐欺、携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律違反等を計上している。
注3:「その他」には、銀行法違反等を計上している。
出典:警察庁ホームページ
今後も、警察には、より積極的にヤミ金を取り締まってくれることを望みたいと思います。
警察には、借金の相談ではなく「闇金被害」の届け出を
さて、本題に入ります。
闇金被害に遭った場合の警察への被害届、告発についてご説明します。
訪ねる先は、派出所ではなく、警察署の生活経済(生活安全)係です。
警察に行ったら、まず
「借金の相談ではなく、ヤミ金融被害の届け出に来ました」
とはっきり言うことが大切です。
ヤミ金融の名前、ヤミ金融の振込先口座番号、貸付名目でお金を受け取った日・自分が支払った日・金額を一回ごとに書き出し、一覧表にまとめて持って行きましょう。
振り込み明細の控えや、闇金融からの着信履歴が入っている自分の携帯電話など、証拠になるものは思いつく限り持って行くことです。
このようにして捜査を求めるとともに、当面の対応についても相談・打ち合わせをしておくことが必要です。
「何かあったら救援を求めたいのですが、誰に、どうやって連絡すればいいですか」
と聞いて
「私に連絡しなさい」
と言ってくれた場合は、係官の名前と電話番号を聞きます。
多くの場合は、110番通報しなさいと言われるでしょうが、その場合は、
「現場に来た警察官が話を分かってくれない場合は、私がここで相談したということを言ってもいいですか。何係の誰に会ったと言えばいいですか」
と言って、応対した係官の名前を聞きます。
告訴・告発の内容
(1)出資法違反
業として金銭の貸付けを行う場合において、年109.5%を超える高金利の契約、受領、要求のどれかをしたときは、10年以下の懲役もしくは3,000万円以下の罰金、または併科に処せられます(出資法五条三項)。
現在横行している闇金融のほとんどは、年109.5%を超える高金利ですので、これが当てはまります。
業としての金銭の貸付けを行う場合において、年20%を超え年109.5%以内の高金利の契約、受領、要求のどれかをしたときは、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金または併科です(出資法五条二項)。
業としての貸付けでなくても、金銭の貸付けを行う者が年109.5%を超える高金利の契約、受領、要求のどれかをしたときは、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金または併科です(出資法五条一項)。
(2)無登録営業
現在、大奥のヤミ金融は、身元が割れるのを防ぐため、貸金業法による登録を受けずに営業しています。
貸金業法による登録を受けないで貸金業を営む行為は、10年以下の懲役もしくは3,000万円以下の罰金、または併科に処せられます(貸金業法四七条一号、一一条一項)。
高金利のうえに無登録営業をするヤミ金融は、出資法と貸金業法の両方で処罰されます。
(3)取立規制違反
夜中に取立ての電話をかける、職場に取立ての電話をかける、自宅に取立てに来て「帰って下さい」と言っても帰らない、他から借金して払うことを要求する、弁護士・司法書士の介入後も取立てをやめない、大声をあげたり乱暴な言葉を使ったりする、電話やファックスを何度も繰り返す、被害者以外の人(家族・職場・近所の人)にばらす、被害者以外の人に支払を要求する、被害者以外の人に伝言を要求するなどの行為は、貸金業法の取立規制違反(貸金業法二一条一項)に当たります。
取立規制違反は、二年以下の懲役または300万円以下の罰金(併科あり)となります(貸金業法四七条の三第三号)。
これらは借金を巡る民事紛争ではなく、刑事事件なのです。
取立規制違反は、無登録業者にも適用されます。
(1)~(3)の違反行為については、いずれも警察に告発することができます。
警察署の対応に問題がある場合
相談を受け付ける警察官は、ヤミ金融事犯の専門担当の警察官とは限りません。
事案の把握が難しいとか、「証拠がない」「犯人は県外にいるのではないか」などの理由で捜査着手の見通しが乏しいと思い、消極的な対応をしがちな側面もあるようです。
しかし、管内犯罪の検挙だけでなく、管内住民の保護もまた、警察の責務であるはずです。
警察署の対応に問題がある場合は、県警本部の生活安全部門に是正・指導を求めるのが効果的です。
そのためには、いつどの警察署の、何係の何という警察官に、どういう対応をされたのか、具体的な事実を指摘することが必要です。
警察官に名前を聞いても教えてくれなかったら、「名前を教えてくれなかった」として、性別や年格好などを説明します。
警察署の対応に疑問や不満がある場合には、具体的事実をメモにとって記録しておくことです。
また、最高裁平成20年6月10日判決が出た後も、「借りたものは返すべきだ」という間違った対応をする警察官もいるようです。
しかし、警察庁のヤミ金融対応マニュアルでは、
「悪質な闇金融相談に対しては、「借りたものは返しなさい」「せめて元本だけは返した方が良い」などの対応をしないことはもとより、同様の趣旨ととられかねないような言動についても厳に慎むこと」
とされているはずです。
この点についても、警察官の対応に問題がある場合には、県警本部に是正・指導を求めることです。
警告電話の依頼
闇金融からの嫌がらせがひどい場合は、警察から闇金融へ警告電話をかけてほしい、と依頼して下さい。
「多重債務問題改善プログラム」には、警察は「違法な取立てを直ちに中止するように、電話による警告等を積極的に行う」とあります。
もしも警察官が
「あなた個人のためにそこまでできない」
と言ったら、
「多重債務問題改善プログラムという公の文書で確認されていることです」
と反論して下さい。
多重債務問題改善プログラムは、首相官邸ホームページからダウンロードできます。
出典:首相官邸ホームページ
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