ヤミ金の「三種の神器」の一つである多重債務者の個人情報は「名簿屋」からリストとして買っています。この名簿が流通するおかげで、多重債務者は借金を重ねるという仕組みです。
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闇金に、買えない個人情報はない
自己破産した人やヤミ金融から一度でも借りた人には、別の業者から次々に勧誘電話やダイレクトメールが殺到します。
一日に20通も30通もDMが舞い込むケースが少なくありません。
「どうしてこんなにたくさんの業者が私の住所や名前を知っているのか」
と気味悪がる債務者も多いですが、答えは簡単。
債務者の情報が、闇金融業者の間で売買されているためです。
東京都内のあるヤミ金融業者は「買えない情報はない」と豪語します。
店には連日、様々な名簿業者が売り込みに訪れます。
大手消費者金融が貸し出しを断った客、都道府県別の多重債務者、他の闇金融の顧客台帳・・・。
クレジットカードの利用状況を詳細に記したデータまであり、ヤミ金融業者自身が「こんなデータ、どうやって手に入れたんだろう」と不思議がるほどです。
ヤミ金融業者は貸し出しの際、子供が通う学校名や親類の勤め先など、名簿に載っていない情報を詳細に聞き出します。
こうして”付加価値”が付いた情報は、更に別の名簿業者や闇金融業者に販売されていくのです。
ある名簿業者は
「名簿屋を回って情報を買い、それをまた売るだけでいい。誰でも始めることができる商売だ」
と明かします。
銀行口座に一方的にカネを振り込んで強引に返済を迫る「押し貸し」も、借金をした覚えがない人に「他の業者から債権譲渡を受けた」と記したお悔やみ電報などを送りつけてカネを巻き上げる手口も、すべて、個人情報があふれかえっている現実があるからこそ成り立っているのです。
闇金の持つ、詳細な個人情報
東京都内で名簿を売買しているある業者は、延べ五億件もの個人情報を保有しているといいます。
事務所の書棚には、学校の同窓会、企業や役所、リゾート施設の会員権所有者などの名簿がズラリと並び、その内容はすべてデータベース化されています。
名簿のジャンル別リストを冊子にまとめてあり、顧客は事務所でそれを閲覧して、欲しい情報を選んで買い取ります。
電話セールスなどに使うため、企業の営業マンがよく訪れてくるといいます。
しかし、この名簿業者の手元には、書棚に並べず、閲覧用の冊子にも載せていない情報があります。
社内で「金融データ」と呼んでいる情報がそれです。
積極的に宣伝はせず、顧客から問い合わせがあった時だけ、「こういうものがありますよ」とこっそり提供するわけです。
業者の内部リストには「金融多重債務者」「自己破産者」、債務整理をした人を意味する「金融一本化」など様々な名簿のタイトルが並んでいます。
大手消費者金融の社名別にまとめられた利用者名簿もあります。
いずれも、住所や名前はもちろん、勤務先、生年月日、電話番号など詳細な個人情報が載っています。
これらの名簿もデータベース化されており、顧客の要望に応じて年齢や性別などの条件を入力して、特定の情報だけ打ち出すことができます。
例えば、「消費者金融A社から借りている東京都在住の三十代の多重債務者男性」という情報を一覧表にしてプリントアウトできるといいます。
一人分の情報は15円。郵便物に貼ることができるよう住所と氏名をシールにしたものは30円です。
こうした情報をどのようにして入手するのか、業者ははっきりとは語りません。
担当者は
「金融会社を辞めた人間が、顧客データを持ち出したりするんだろう。だが、データが持ち込まれる前、その出所は詮索しない」
と言います。
多重債務者や自己破産者のリストは、ヤミ金融業者が購入している可能性がありますが、
「うちは、客から尋ねられたリストが手元にあれば、それを売るだけのこと。何に使うかなんて聞かない。必要な人が必要なリストを買っていく」
と話すだけです。
個人情報の売買そのものを取り締まる法律は、平成27年になってやっと法制化に目処が立ったものの、今のところ実効性は無く、担当者の言葉からは罪の意識は微塵も感じられません。
「個人情報保護法の成立及び改正に関する主な経緯」
出典:個人情報保護委員会
官報情報も入手
平日のほぼ毎日発行されている国の官報には、自己破産した人の氏名と住所が掲載されています。
全国の破産者の情報が載るので、北海道や沖縄で誰が破産したかを東京で知ることも可能です。
裁判所の担当者は、その狙いを「債務者の破産を知らない債権者に対し、その事実を知らせるため」と説明しています。
ところが、こうした情報が実は、闇金や悪質な貸金業者の「メシの種」になっているのです。
多重債務者の救済に取り組む東京都内の団体のメンバーは、
「自己破産には、借り癖がついた多重債務者を強制的に借金から遮断させる効果があった。だが、いまや下手に自己破産を勧めると、かえって官報に載った名前と住所を見たヤミ金融業者からの勧誘攻撃を受けて、さらなる借金地獄に陥ってしまいかねない。」
と話します。
また、ある貸金業者は「官報なら情報の精度は抜群だ」と語り、官報情報が”商売”に悪用されていることを示唆しています。
官報の自己破産情報をリスト化して販売している愛知県の業者は
「官報がどこで売られているか知らない人が多く、これをデータ化すれば商売になると思った」
と明かします。
主に企業の人事担当者が、従業員を雇用する際に破産者かどうか調べるために使うといいますが、金融業者とおぼしき人物が買っていくケースもあるといいます。
この業者も、都内の名簿業者同様、
「まともな貸金業者は破産者には貸さないから、うちのリストを買うのはヤミ金融業者でしょうね。ただ、相手の素性やどんな目的でデータを買うのか、こちらは聞きませんから」
とあっけらかんと話します。
個人情報の需要は増えている
東京都内に本社を置くとある情報サービス会社は、コンピューターのデータ入力を本業としていますが、貸金業者から流出した融資申込書などの顧客情報をリスト化し、ヤミ金融などに売りさばく「名簿屋」です。
同社の営業マンが手にした融資申込書には、住所・氏名、生年月日、勤務先はもちろん、
「給料日・25日」
「使用目的・レジャー」
「消費者金融からの借り入れ・十件、残高400万円」
など情報が記載してありました。
配偶者が借金をしていることを知っているかどうかまで書いてあります。
貸金業者が客から聞き取ったものです。
こうした情報は、貸金業者から直接買い取ることもあれば、別の名簿屋を通じて買い取ることもあります。
仕入れ値は一件につき50円。売値も50円ですが、同じものを何度も売れば稼ぐことができます。
ダイレクトメールに貼るラベルにすれば、もう少し高く売ることができます。
どの消費者金融からどのくらい借りているかまで入った情報になると、一件100円前後に値段が跳ね上がります。
もっとも、最近で一番売れているのは携帯電話の番号リストで、一人分につき25円程度で売っているといいます。
こうした申込書などの原本は、ほとんどシュレッダーにかけて処分しています。
ナマの情報そのものを欲しがる闇金融業者も多いのですが、情報の「仕入れ元」が、警察の摘発を恐れて「データを入力したら処分してくれ」と求めることが多くなっているからだといいます。
情報サービス会社も、最近は販売するリストに債務者の借り入れ総額を記載しないようにして用心しています。
金額を記入したデータを闇金融が社会問題として取り上げられるようになった2002年後半から、名簿の販売を少し控えているのです。
ですが、営業マンは
「個人情報の売買が難しくなっている分、水面下で需要は増えている。ほとぼりが冷めたら、また売ることができるようになるだろう」
と楽観的な様子を見せました。
「三種の神器」を使った、元ヤミ金の振り込め詐欺の横行
山口組系五菱会系ヤミ金グループの摘発や改正貸金業法の完全施行により、暴力団がヤミ金から撤退し、多重債務者の数が大幅に減少したことで、ようやく事態は収束するかと思えたのですが、そういうわけにはいきませんでした。
ヤミ金から倉替えした悪質業者たちが、その代わりに始めた新手の商売が、いわゆる「振り込め詐欺」だったのです。
振り込め詐欺が増え始めたのは、山口組系五菱会系ヤミ金グループが摘発され、山口組本部が捜査された2003年以降のことです。
ヤミ金も振り込め詐欺も、共通した手段と道具を使っています。
ヤミ金三種の神器の一つ「名簿」
闇金は、多重債務者や自己破産者のリストを「名簿屋」から買います。
「名簿屋」は、おそらく、消費者金融の元社員などから多重債務者や自己破産者の名簿を入手していると思われます。
当時、料金は「多重債務者一人につき300円」と言われてましたから、一万人の顧客名簿なら300万円で売れるわけです。
大手消費者金融を退職した元社員が、10万人の顧客名簿を持ち出して名簿屋に売れば300万円になります。
ちょっとした退職金代わりです。
このような名簿に載せられた人を、ヤミ金はターゲットにしていたのです。
振り込め詐欺グループも、多重債務者や自己破産者などの名簿のほか、同窓会名簿、町内会名簿、PTA名簿、教員名簿などを名簿屋から入手してターゲットにしています。
ヤミ金三種の神器の一つ「銀行口座」
もうひとつ、闇金と振り込め詐欺に共通しているものに「銀行口座」があります。
捕まらないように、彼らは他人名義の銀行口座を「口座屋」から入手するのです。
銀行口座は、通帳、印鑑、キャッシュカードの三点セットで、4万円から7万円程度で売買されていると言われています。
ヤミ金三種の神器の一つ「携帯電話(電話番号)」
それから、「携帯電話(電話番号)」というツールがあります、
身元の判明しない携帯電話(電話番号)を入手して、取立てや詐欺に利用しているのです。
- 名簿
- 銀行口座
- 携帯電話(電話番号)
この三つは「三種の神器」と言われていて、三種の神器があれば、拠点が東京にある場合でも、北海道から九州まで日本全国の人をターゲットにすることができるわけです。
具体的な手口も、大同小異です。
「殺すぞ」「指持ってこい」などと言って恫喝するのがヤミ金ですが、振り込め詐欺は
「おたくの息子さんが交通事故を起こしました。被害者の助手席に妊婦が乗っていて、いま、病院に担ぎ込まれています、ちょっと被害者の弁護士に代わりますから」
といったような、言葉巧みな「騙し」でお金を騙し取ります。
恫喝から騙しに変わっただけで、やっていることは一緒です。
そして、闇金の恫喝がある種パターン化していたのと同様に、振り込め詐欺の手口も、組織的なマニュアルに基づいています。
それは「劇場型」と呼ばれていますが、摘発された振り込め詐欺の例を見ると、息子役はこう、弁護士役はこう・・・といったマニュアルがしっかりあるわけです。
全国化する詐欺犯罪に警察は対応できていない
振り込め詐欺は、前述した「三種の神器」があれば誰でもできますから、必ずしもすべてが暴力団関係者とは限りません。
しかし、その背後では反社会的集団が相当関与していると見られています。
ただ、振り込め詐欺については、大々的な組織的摘発があまりなされていません。
振り込め詐欺の場合、末端には、振り込まれた金をおろしに行く「出し子」がいます。
この役割を中間的なグループが担当し、そこから、上の方に金が流れていきます。
「上の方」には暴力団などが存在すると想像されますが、彼らは跡を消し、証拠を残さず、口を割らずにミッションを遂行しているので、さかのぼって組織的に摘発することができません。
一方、警察の組織でこれまでヤミ金を扱っていたのは生活経済課という部署ですが、振り込め詐欺の担当は知能犯係で、警視庁で言えば捜査二課の分野です。
ただ、知能犯係は、これまで加害者、被害者が少人数に限られるような詐欺事件は取り扱ってきましたが、被害者が全国的に大量に発生する組織的な詐欺犯罪を摘発するようなことは、あまりやったことがありません。
また、日本の警察が都道府県警という地域割り組織になっていることの弊害もあります。
振り込め詐欺の場合でも、被害者が大分に住んでいれば大分県警、熊本なら熊本県警と、地元の警察へ相談に行くわけですね。
ところが、送金先が東京だったりすると、実際に犯人を捕まえようと思ったら、大分県警や熊本県警の刑事が上京して、アジトを調べたり、金をおろしにくる「出し子」を調査したりしなければなりません。
現実問題として、地方の警察が一件の詐欺のためにそれだけの対応をしてくれるでしょうか。
犯罪が全国化しているのに、地域割りの警察組織は十分に対応できていないのです。
振り込め詐欺の一部は、闇金業者が商売替えをして行っていると言われています。
彼らが使っているツールは、ヤミ金時代と同じ「三種の神器」です。
これを使って、またぞろ多重債務者や破産者たちをターゲットにし、食い物にしようとしているわけです。
ヤミ金業者達は、このように、実際には金を貸さずに被害者から金を騙し取るという新手の手口を考え出しました。
そして、これらの詐欺行為に対して、全国の警察は対応しきれていないという事実があります。
また、「振り込め詐欺」の範疇に含まれる「オレオレ詐欺」や「架空請求詐欺」「融資保証金詐欺」の手口自体は減少傾向にありますが、最近ではまた新たな手口「還付金詐欺」などが横行し、被害が増えています。
「振り込め詐欺を始めとする特殊詐欺の被害状況」
出典:警視庁WEBサイト
話が「振り込め詐欺」にそれてしまいましたが、ヤミ金「三種の神器」の一つ、「名簿」を売買する「名簿屋」は、未だに暗躍しています。
2005年に制定された「個人情報保護法」がある程度の規制をかけているとは言え、個人状保護法自体が「個人情報の売買や流用を規制する法律ではない」という事実がある以上、その摘発は困難になっているのです。
2017年5月に改正個人情報保護法が施行される予定ですが、「名簿屋」は、この法律の抜け穴を見つけ出し、その後も活動を続けるであろうと当サイトでは考えています。
ヤミ金業者と名簿屋の蜜月は今後も続いていくのではないでしょうか。
「名簿屋」規制の難しさと制度改正大綱の狙い
出典:ワイヤレスワイヤーニュース