最近、注目されているのは、いわゆる「偽装質屋」という形のヤミ金です。質屋になりすまし、貸金業法の裏をかいて暴利を得ます。
高齢者を狙う闇金、質屋になりすます偽装質屋とは
最近、注目されているのは、いわゆる「偽装質屋」という形のヤミ金です。
偽装質屋は、「質屋」になりすまし、貸金業法の網をかいくぐって、利用者に小口のお金を貸付け、違法な高金利を取るれっきとしたヤミ金です。
なぜ、ヤミ金が質屋になりすます必要があるのでしょうか。
正規の貸金業者が守っている貸金業法の上限金利は、年利20%です。
しかし、質屋に限っては、上限金利は年利109.5%まで認められています。
闇金業者は、ここに目を付け、質屋という営業形態をとり、違法な金利をかすめ取る方法を見つけ出したのです。
偽装質屋が現れた背景
質屋は、「質屋営業法」に基づいて、都道府県公安委員会の許可で営業しています。
そして、2006年の貸金業法改正で「グレーゾーン金利」が撤廃されたときも、質屋だけは、質屋営業法に基づいて出資法の上限金利の例外として、年109.5%の高利が容認されていたのです。
質草を預かる保管費用や、鑑定、品書きをするためのさまざまな経費がかかるというのが、例外規定の理由です。
もともと、サラ金やクレジット会社が出てくるのは、1960年代の初めくらいからです。
戦後の混乱が終わり、高度経済成長が始まるこの時期に、家電製品や自動車などが大量に生産されるようになり、大量販売、大量消費を補完するものとして、クレジットやローンが普及し始めました。
クレジットとかローンというのは、消費者の将来の収入を担保にしてお金を貸し付ける取引です。
ところが、将来の収入が担保とはいえ、実質、無担保で貸し付けているので、払えない場合に強硬な取立てが行われるという問題が発生するようになったのです。
それまでの庶民金融の中心といえば、質屋でした。
例えば、お客が持って来た十数万円の腕時計を預かり、七万円くらいを貸付け、その貸付金を返済できないと、腕時計を質流しして回収する。
ほかにも、着物とかいろいろな高級品、バッグなどを担保に預かって値踏みをし、その六掛け、七掛けくらいを貸し付ける。
払わなかったら質流しするわけですから、本来、取立てという問題は起こらないわけですね。
質屋は、お客と質屋側の信用取引で成り立ってきた商売です。
偽装質屋は、質屋の「年利109.5%の利息」だけに目を付け、質屋の営業形態を真似るという手口を考えつきました。
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偽装質屋の手口
このように、高価な品物を扱って質流しをするのが従来の質屋ですが、最近増えている「偽装質屋」というのは、せいぜい数百円から数千円程度の、大した価値のない品物を質に取って、年90%、100%の高金利で貸し付けます。
ただし質流しはせず、相手が払わない時は強硬な取立てを行う闇金業者です。
なぜ質流しをしないのか?
それは、取った品物をいつまでも預かり続け、利用者から長期間に渡り、高金利をだまし取り続けるのが目的です。
質屋としての免許を取っているケースはあるのですが、実質はヤミ金特有の取立てを行う悪徳貸金業者です。
彼らは、質屋のみに認められた「年109.5%の特例高金利」を悪用しているわけです。
そのターゲットは主に年金受給者や生活保護受給者です。
年金が振り込まれる口座から自動引き落としをする方法で、貸金の回収を行っているのです。
つまり偽装質屋は、確実に回収できる年金や生活保護費などを担保に、現金を貸し付ける手法を採っているのです。
例えば、年金受給者が偽装質屋から金利109.5%でお金を借りた場合、10万円を一年借りれば利息は10万9,500円になります。
年金は、2ヶ月に一度支給されますが、振り込まれるやいなや偽装質屋の口座に返済するお金が自動引き落としされてしまいます。
年金受給額の平均が14万5,500円(厚生年金の場合)ですから、この利息が引き落とされてしまうと、残りが3万6,000円となります。
年金受給者は、このわずかなお金で2ヶ月間を暮らさなくてはいけなくなるのです。
すると再び、年金受給者は偽装質屋にお金を借りに行くことになります。
そしてこれが繰り返され、借金のスパイラルがアリ地獄のように続いていくというパターンが出来上がってしまうのです。
返済は口座からの自動引き落としなので、厳しい取立てを行うことは少なくなります。
ですから、年金受給者は偽装質屋に対し、なぜか感謝の気持ちを持ち、ありがたがるというケースが多いようです。
もともと数百円や数千円程度の品物を質に入れて、何万円ものお金を借りることができるわけですから、年金受給者が偽装質屋に感謝するような不思議な心境に陥るのも無理からぬ理由かもしれません。
しかし、偽装質屋は実際は法外な金利を取る悪徳貸金業者、れっきとしたヤミ金なのです。
偽装質屋の勧誘手口は、流行りのネットなどではなく主にチラシです。
ターゲットは高齢者、だからチラシが有効な手段なのです。
「高齢者でも安心」などと謳ったチラシを投函し、堂々と勧誘します。
価値のない品物で金を貸し付ける、怪しい手口のチラシにはくれぐれも気をつけるようにしましょう。
偽装質屋の手口フロー
なんらかの物品を担保に融資するという、質屋の営業形態をとる必要があるため、品物を預かります。実質的には、質屋と違うため、担保としての価値はなくてもいいわけです。
お金を引き出すための必需品を預かって、確実に返済金を取ろうとします。
数万円~数十万円程度の少額のお金を貸します。
利用者に完済させない方法を取ることにより、長期間に渡り違法金利を得続けます。
返済する金利は、利用者の口座から自動引き落としされます。
本来の質屋の場合、返済できなければ、担保である質草を質流しします。
一旦質流れしてしまえば、元金も金利も支払う必要はありません。
ですが、偽装質屋は質流しを意図的に行いません。
年金受給者から金利を取り続けるのが目的です。
しかし、このように年金を担保として扱うことは、違法行為です。
年金手帳や通帳を取り上げることももちろん法律で禁止されています。
偽装質屋の訴訟例と逮捕例
2012年10月に、熊本県内の12人の被害者が、四つの偽装質屋に対して、計720万円の損害賠償を求める訴訟を起こしています。
被害者たちは、年利96%以上で貸し付けられたということです。
そして遂に2012年10月、福岡の偽装質屋が全国で初めて逮捕されました。
被害者は数千人を超え、被害総額は数億円という大規模なものでした。
さらに、2013年11月13日、警視庁生活経済課は、貸金業違反と出資法違反の容疑で、偽装質屋「ひょうたんや」の運営会社社長ら8人(東京都)を逮捕しました。
摘発された偽装質屋は廃業しましたが、新たな偽装質屋は九州を中心に全国各地に拡がっています。
消費者庁も偽装質屋への注意喚起を行っています。
いわゆる「偽装質屋」に関するトラブルが増加|消費者庁
出典:消費者庁ウェブサイト
群馬司法書士会も下記の通り注意喚起を行っています。
偽装質屋経営者らの逮捕に関しての会長声明
出典:群馬司法書士会ホームページ
NHKでも取り上げられました。
「"偽装質屋"狙われる高齢者たち」クローズアップ現代
出典:NHK「クローズアップ現代」
こうした偽装質屋は、もともと福岡を中心に九州で展開されていましたが、最近は東京都内や関東、北海道などでも店舗が確認されており、警察や自治体も警戒を深めています。
偽装質屋を撲滅するためには、警察による取り締まりの強化とともに、質屋営業法における特例高金利(年利109.5%)を撤廃する質屋営業法の改正が求められています。
正規の質屋は、前述の通り、都道府県公安委員会の許可を受けて営業しています。
偽装質屋は基本的には無許可営業しているケースが多いのが特徴です。
しかし中には、許可を取って営業を行っている業者もおり、見分けるのは困難になっています。
もし、明らかに無価値の物を担保に不相応な融資をする質屋に気づいた場合、絶対に利用しないよう、十分注意しましょう。
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