元闇金業者の独白です。その昔「トイチ」で儲けていた闇金は、その後「トサン」「トゴ」「トナナ」などより法外な金利を取るようになっていったのです。しかし、社会環境の変化もあり、昔のように儲からなくなってきたのも事実のようです。
「暴利をむさぼる無登録の悪徳金融にして、世間からの鼻つまみ者」
「その金利は10日で1割(通称:トイチ)」
「返済が遅れた客への追い込みは苛烈を極め、一度食らいついたら放さない」
「ものすごい額を稼いでおいて、税金なんて納める気もない」
世間から見た闇金のイメージといえば、こんなところだろう。
だが、これらのほとんどは間違い。
言ってしまえば「偏見」だ。
闇金の業者として何年もうまいメシを食ってきた俺に言わせれば、この中に正解はたったひとつしかない。
4つ目の「稼ぎが良くて税金フリー」
・・・これだけは、まあガチと言っていい。
ただしそれも、数年前までの話だ。
社会情勢、つまり闇金を取り巻く状況が変わっちまった最近では、こいつもまた微妙になっている。
要するに「世間のイメージ」なんてものは、まったく実状を映しちゃいねえってことだろな。
闇金が法外な金利を取るなんてことは、近頃じゃ中学生でも知っている。
いわば常識だ。
だけど俺たちが無登録の業者だというのは間違いだ。
今でも全国に数千軒はある闇金融業者の多くは、キッチリと都道府県に申請を出して認可された登録業者だ。
そう聞くと、驚くヤツもいるかもしれない。
「なんで闇金なんかが認可されるんだ」
実はこれには俺たち自身も驚かされているかもしれない。
金融業の登録申請なんて呆れるくらいに簡単なんだ。
ちょいと貸金業協会に行って登録手続きをとって、数万円程度の登録料を払うだけで、ほぼ誰にでも登録番号が交付される。
登録できないのは破産者や前科を持ったヤツくらい。な、楽勝だろ?
だから俺たちは、大手を振って貸金業を営める。
まあ金を貸すときの金利は赤ん坊にだってわかるくらいの違法な暴利なんだが、存在自体は正規金融業者ってわけだ。
だから、登録業者としては広告だってバンバン打てる。
そして、その広告を見た客が俺たちにおいしいシルを吸わせてくれるってあんばいだ。
され、その客に金を貸す際の金利だが、これは残念ながらトイチじゃない。
「闇金ていったらトイチ業者のことじゃないのか?!」
どうやら世間じゃこんな認識が浸透してるみたいだが、これは大阪の歓楽街を舞台にした某金融マンガに影響されすぎだな。
確かにその昔には、裏の金融屋といえばトイチが全盛の時代もあった。
だけど今では、単なる昔話にすぎない。
正直いって、もうトイチなんていうヌルい金利じゃ全然おいしくないんだ。
つまり最近の闇金の金利は、もっともっと高い。
基本となるのは、10日で5割。通称は「トゴ」だ。
トイチの時代が終わり、トサン(10日で3割)の時期を経て、トゴが主流の現在に至る。
中にはトナナ(10日で7割)なんて金利を吹っかけてる連中だっている。
とにかく、闇金 = トイチなんてイメージは、もはや時代遅れだ。
次の間違いは「闇金の追い込みは苛烈で、食らいついたら放さない」だ。
実のところ俺たち闇金は、世間の人が思っているほど、しつこくない。
なにしろ闇金業者だった俺自身が、はじめのうちは、こんなにユルくていいのかって戸惑ったもんだ。
最初に勤めた店の先輩社員とも、そんな会話をしたことがある。
「もっとこう、地の果てまで追い詰めるのかと思ってましたよ。」
「2万や3万の回収にそんな手間かけられるわけないだろ。回収が無理だと思ったら、さっさと次に当たるのが鉄則なんだよ。」
拍子抜けといえば拍子抜けだが、考えてみるとその方が効率的なんだ。
さっきも言った通り闇金の金利はバカ高い。
そして、ひとりの客に貸す金額なんてたかがしれている。
だからちょっとでも面倒な問題が起きると、わりと簡単に手を引いちまう。
ひとつの案件に固執するより、より確実な回収を数多くこなした方が稼げるって考え方だな。
多少は焦げ付きが出ても十分にもうかるだけの金利が、ここで生きてくる。
とはいえ、むやみやたらに金利だけを上げてるワケじゃない。
そもそも闇金は、他の金融機関じゃ相手にされないような客に貸し付けているうえ、その客だってポンポン逃げる。
払わないヤツだって多い。
だからこそ、金利を上げて、利益を確保せざるをえない側面もあるんだ。
「盗っ人たけだけしい」と思われるだろうが、まあ、そういう主張もあるってことだ。
そうやって利益を確保してきた闇金だが、実際に驚くほど儲かっていた時期はあった。
そして稼ぎの中から律儀に税金を払ってるヤツなんていなかったのも確かだ。
けれど、闇金の全盛時代は、2003年くらいには終わってる。
マスコミや世間からさんざん叩かれて悪名が轟きわたったせいで、まず客が知恵を付けてきたんだ。
借りる時には「この金利で結構です」ってペコペコしてたくせに、返済が厳しくなるとすぐに警察に駆け込んだり弁護士に泣きつくようになりやがった。
おかげで、焦げ付きの件数は増えることはあっても、減ることはない。
借用書を交わしたくせに、国家権力を借りて平気で踏み倒そうとする客と、踏み倒される闇金業者。
法はともかく、どっちが仁義に反してるかは明らかだと、俺は思うけどな。
それに警察の締め付けが厳しくなったせいで、最近の闇金は「客の元に出向いての取立て」という行為自体をしなくなっている。
融資も返済も振り込みで済ませて、催促も電話のみ。
つまり客と顔を合わせない営業形態になってる。
だが、客のもとに回収に行かないんだから、そりゃ回収率は落ちざるをえない。
こんな事情が重なって、今では闇金もそんなにもうかる商売じゃなくなっちまった。
まあ世の中から金に困るヤツがいなくならない以上、闇金も絶滅しないだろうが、元闇金業者にとってはさみしい話だな。
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