個人再生は、裁判所を使う手続きで、分割(原則3年)で借金を支払う方法です。自宅を手放さず借金が整理できる債務整理方法です。
個人再生なら住宅を手放さずに借金が整理できる
個人再生は、裁判所を使う手続きで、分割(原則3年)で借金を支払う方法です。
特徴は、住宅ローン以外の借金を大幅に減額できるという点です。
平成13年にできた比較的新しい制度で、借金に苦しんでいる人を自己破産させずに救済し、生活の再建を図ろうとする制度です。
特に住宅ローンを抱えている人にとっては、自宅を手放すことなく借金が整理できるというメリットがあります。
・・・個人再生とは「法律で定められた金額」を貸金業者に支払い、借金を整理する方法
任意整理とも自己破産とも違いますが、任意整理と同じ点は、裁判所の手続きで借金を整理するため、裁判所に入ってもらうことです。
企業が破綻すると、再建のために、民事再生法の適用を申請します。
平成13年4月から、その特則として個人のための再生手続きが施行されているのです。
- 今の毎月の返済額を軽くすれば、生活していけるか
- 住宅(ローン支払中でも)を守りたいか
個人再生を選ぶかどうかでは、この二つがポイントになります。
再生計画案の提出
個人再生の申立てが裁判所に認められると、まずは借金の総額がいくらか、借入先はいくつあるかといったことを正確に調べられます。
借金の総額が確定したら、住宅ローン以外の借金について、自分の収入などを考慮してどれくらい減額すれば返済していけるかを考えます。
そして、もし減額が認められたとしたら、その後の月々の返済額、返済期間はどうするつもりかという再生計画案をつくって、裁判所に提出します。
裁判所は、債権者の意見も聞きながら、債務者から出された再生計画案を認めるかどうかを判断します。
どのくらいの借金の減額を裁判所が認めてくれるかは、個人再生を申し立てた人の収入などの状況によります。
1,000万円程度の借金なら、最大で5分の1までの減額が認められることもあります。
住宅ローンを返済していけることが条件
個人再生という制度は、住宅ローン以外の借金について減額を認めることで住宅ローンの返済を助け、本人が自宅を手放さずに借金を整理できるようにするというのが狙いの一つです。
ですから、住宅ローンについては、返済期間の見直しなどはできますが、返済額自体を減額することはできません。
つまり、住宅ローンのある人が個人再生を利用する場合、住宅ローンを返済できる見込みがなければ利用する意味がないといえます。
当然、個人再生を利用する場合は
「将来にわたって一定の収入の見込みがあって、住宅ローンを返済していけること」
が条件となります。
また、減額が認められる住宅ローン以外の借金は、その総額が
「3,000万円以下であること」
も条件となります(担保付き借金はのぞく)。
逆にいえば、住宅ローンのほかに3,000万円を超える借金がある人は、個人再生を利用できません。
また、住宅ローンのない人も、無担保の借金が3,000万円以下であれば、個人再生を利用することはできます。
個人再生の手続きの流れ
個人再生の手続きの流れについて、以下にご説明します。
自分が住んでいる地域の裁判所に「個人再生制度を利用したい」と申し立てます。
個人再生制度を利用するのにふさわしいと裁判所が判断すれば手続きがスタート。
借金がどれくらいあるか、貸主はどれくらいいるかなどを調べます。
借金をどれくらい減額するのか、減額したあとの借金の返済条件(返済額、返済期間など)をどうするかなどについて計画を作成して、裁判所に提出します。
実際にカネを貸している債権者からも言い分を聞きます。
裁判所が再生計画案を認めれば手続きは完了し、新たな返済がスタートします。
個人再生の申し立てから再生計画案が認められるまで
個人再生の流れをかんたんに図で説明しましたが、もう少し詳しく見てみましょう。
裁判所によって若干の違いはあるものの、手続きの流れはだいたい以下のようになります。
(1)裁判所へ申し立てる
裁判所に、個人再生の申立てをおこないます。
同時に、支払い予定額も申告します。
自分で申し立てる場合は、提出するすべての書類を自分で作成しなければなりません。
司法書士や弁護士に依頼していれば、書類作成は司法書士や弁護士がおこないます。
(2)個人再生委員が選ばれることもある
再生委員が選任されるか否かは、各裁判所によって取り扱いが異なります。
たとえば、大阪地方裁判所の場合は必ずしも選任されません。
また大阪地方裁判所では、実際に選任されるかどうかに関わらず、15万円の予納が必要とされています。
当然、選任されなかった場合は、認可決定後に還付されます。
(3)個人再生委員が選任されると
個人再生委員が選任されると、申立人の財産や収入の状況を調査したり、このあとに出てくる(6)の再生計画案作成の助言などをおこないます。
(4)申立手続きの開始決定が出される
裁判所から手続き開始要件がそろっていると確認されれば、申し立て直後に開始が決定される場合があります。
将来的に支払っていける見込みがあるかも重要な判断材料になります。
(5)業者等から再建の届出がおこなわれる
申立て時に作成した債権者名や金額が記載された一覧表を見た債権者が、債権の有無や債権額に異議がないか等を確認します。
(6)再生計画案をつくり提出する
(5)で確定した債権額をもとに再生計画案を作成していきます。
このとき裁判所は、この計画案で申立人が支払っていけるかなどの不認可事由等を確認します。
(7)給与所得者再生の場合、再生計画案に対する業者の同意は不要ですが、小規模再生の場合は消極的同意が必要になります
そしてこの同意をもって裁判所は再生計画を認可します。
期間は各裁判所によって違い、一般に6ヶ月ほどはかかると思ったほうが良いでしょう。
個人再生のメリットとデメリット
個人再生には次のようなメリットがあります。
(1)任意整理より借金の減額幅が大きくなり返済額が少なくなる
(2)職業の制限を受けない
自己破産では、免責が確定するまで、従事できない職業が決められています。
免責を受けると復職できますが、それまでの3~4ヶ月をどうするかという問題が起きてきます。
個人再生ではこうした職業の制限はないため、仕事の心配をする必要がありません。
(3)借金の理由が問題にされることはない
自己破産では、借金の理由によって免責が受けられないこともあります。
しかし、個人再生では借金の理由が問題にされることはありません。
たとえば、その理由がギャンブルや遊興費などでもかまわないということです。
(4)ローン中のマイホームを手放さずに利用できる
自己破産では、ローン中でもマイホームが処分されるケースがあります。
しかし、個人再生では住宅ローン特則という制度が利用でき、返済計画どおりの返済を続けている限り、マイホームを守ことができます。
なにごとにもメリットとデメリットがあるように、個人再生にもデメリットはあります。
個人再生のデメリットとして、次のようなものがあります。
(1)手続きに複雑なところがある
個人再生は、借金の返済がむずかしくなった人に有利になっています。
その一方、債権者の方はただ意見を聞かれたり、再生計画を拒否するにはかなりの同調者が必要だったりします。
手続きはシンプルになっていますが、公平を期すためにまだ複雑な面があります。
(2)求められた書類の提出を怠ると手続きが終了する
裁判所に申立てが受理されてからも、いろいろな書類の提出が求められます。
それら書類を決められた期限内に提出しないと、手続きが終了してしまうおそれがあります。
つまり、申立てがなかった状態になるおそれがあり、貸金業者からの取立て・特則が復活することになってしまいます。
(3)ブラックリストに載る
「任意整理について」でお話ししたように、このことをデメリットと言うべきかどうかは本人次第です。
せっかく債務整理をするのですから、このことを経済的更正に活かしてください。
自己破産とはどこがちがう?
自己破産も個人再生も、ともに裁判所の判断を仰いで借金を整理する方法です。
ただし、この二つの制度には、大きなちがいがあります。
自己破産では、すべての借金について債務が免除されます。
つまり、自己破産で免責されると、もう借金を返済しなくてもよくなるのです。
ただし、家や土地などの不動産や株式といった資産は、処分されて借金の返済に充てられます。
一方、個人再生は住宅ローン以外の借金が減額はされますが、すべての債務が免除されるわけではありません。
減額されたあとの借金と住宅ローンは、きちんと返済していかなければなりません。
そのかわり、家やマンションを取られることはなく、再生計画どおりに返済していけば、これまでと変わらない生活を送ることができるのです。
自己破産と個人再生のかんたんな比較
自己破産 | 個人再生 | |
|
メ リ ッ ト |
|
|
デ メ リ ッ ト |
|
借金は整理したいが、せっかく購入した家やマンションは手放したくないという人、あるいは住宅ローン以外の借金が大きくてローン返済が苦しくなっているという人などは、個人再生の利用を検討してみてください。
小規模個人再生と給与所得者等再生
ここまで「個人再生」と言ってきましたが、個人再生には実は「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の二つの種類があります。
小規模個人再生を利用できる条件は次のようになっています。
(1)住宅ローンを除いた借金総額が5,000万円以下(利息制限法によって引き直した額)
(2)将来にわたって継続的、または反復的に収入が見込める
主な対象は自営業者ですが、会社勤めの方や公務員も利用OKです。
第二の個人再生である給与所得者等再生を利用できる条件は、先の(1)と(2)に、「定期的な収入の変動幅が小さいと見込まれる」という項目が追加されます。
収入の変動幅では、「過去2年間の年収で、変動幅がプラスでもマイナスでも20%以内」であることが一つの目安になっています。
主な対象は給与所得者(会社勤めの方や公務員)で、自営業の方は利用できません。
パートやアルバイトの方でも利用が可能ですが、営業やタクシードライバーのような歩合制の方はどうでしょうか。
この場合、歩合の比率が高いと、変動幅が大きくなって利用できない可能性もあります。
しかし、それまでの実績から、歩合給にそう大きな変動がなければ利用可能です。
最近は、年俸制を採る会社も増えています。
1年契約の年俸制のような場合、契約が終わる翌年も確実に契約更新できるようなら利用できます。
契約更新できる保証がないと、この制度を利用することはできません。
年金や恩給を受けている方はどちらの個人再生も利用OKです。
ただし、生活保護を受けている方の場合、どちらの個人再生も利用できません。
「国から支給される生活保護費は、生活していくための最低限のお金」です。
そこに、返済に充てる余裕はないと考えられるからです。
無職や失業中の方でも、事情によっては小規模個人再生や給与所得者等再生が利用できます。
詳しくは、弁護士や司法書士などに相談されるとよいでしょう。
専業主婦の方で、債務整理が必要な方もいます。
ご主人から毎月一定のお金を渡されている専業主婦は、個人再生を利用できるのでしょうか。
自分自身に収入がないため、専業主婦はどちらの個人再生もできないことになります。
二つの個人再生について説明しましたが、要は裁判所が再生計画案を認めてくれると、その時点で個人再生制度の利用は成功したことになります。
ただし、大切なのは、むしろそのあとです。
再生計画案どおりに、きちんと住宅ローンなどの借金を返済していけるかどうかです。
せっかく裁判所が住宅ローン以外の借金の減額、住宅ローンの返済条件の見直しを認めてくれても、本人が再生計画案どおりに返済できなければ、債権者は再生計画の取り消しを申し立てることができるのです。
この再生計画の取り消しが認められると、借金の減額も住宅ローンの返済条件見直しもなかったことになってしまいます。
小規模個人再生での返済金額はこう決まる
小規模個人再生では「この手続きを利用するなら、これだけの支払いはしなければならないという金額」が決められています。
この金額を、「最低弁済基準額」といい、借金総額が基準になっています。
繰り返しになりますが、基準になる借金総額は、弁護士や司法書士などが「利息制限法に照らして引き直した借金総額」になります。
返済しなければならない金額は、その借金総額によって次のようになっています。
- 借金総額が100万円未満・・・借金総額
- 借金総額が100万円以上~500万円以下・・・100万円
- 借金総額が500万円以上~1,500万円以下・・・20%
- 借金総額が1,500万円以上~3,000万円以下・・・300万円
- 借金総額が3,000万円以上~5,000万円以下・・・10%
返済しなければならない総額を裏返すと、元本の減額になります。
いまの数字から、小規模個人再生での元本の減額幅はこうなります。
- 借金総額が100万円未満・・・減額幅はゼロ
- 借金総額が100万円以上~500万円未満・・・減額幅は最大で80%
- 借金総額が500万円以上~1,500万円未満・・・減額幅は最大で80%
- 借金総額が1,500万円以上~3,000万円未満・・・減額幅は最大で90%
- 借金総額が3,000万円以上~5,000万円未満・・・減額幅は90%
このように、小規模個人再生での減額幅は大きいものです。
一般的に、その幅は任意整理より大きく、自己破産より小さくなります。
資産があると、返済額が増えるケースも
小規模個人再生では、借金総額(利息制限法に基づいて引き直した総額)に応じて、返済しなければならない金額(最低弁済基準額)が決まります。
ただし、どんなケースでも、この最低弁済基準額さえ支払えばよいというわけではありません。
・・・清算価値保障の原則に反してはならない
再生計画によって返済額を決める際、この制限があるからです。
またこむずかしい法律用語が出てきましたが、この原則を簡単に言い直してみましょう。
・・・再生計画による返済額は、自己破産で支払われる額以上を支払わなければならない
こう言い直してみると、むずかしいこの原則も理解しやすくなります。
自己破産は「借金の支払いをせず、借金を解決する方法」です。
しかし、一定の資産があれば資産は現金化され、貸金業者などに分配されます。
小規模個人再生では、自己破産したときに分配される資産があるかどうかが問題にされるのです。
具体的なケースで考えてみましょう。
仮に5社から借り、借金総額は450万円、資産は200万円のAさんがいたとします。
このとき自己破産と小規模個人再生ではどんな違いが起こるでしょうか。
(1)自己破産の場合
・・・450万円の借金はなくなるが、200万円の資産を現金化して5社に分配する。分配する額は、各社の借金総額によって決まる。
(2)小規模個人再生の場合
・・・返済しなければならない金額は総額100万円。
5社の借金額に応じ、各社にこの100万円を分配する。資産は処分せずにすむ。
Aさんにとって、どちらが有利でしょう。
もちろん、小規模個人再生です。
小規模個人再生をすると、支払いで100万円有利になります。
しかも、自己破産と違い、小規模個人再生では、200万円の資産を持ち続けることができるからです。
逆に、貸した5社にすればどうでしょうか。
自己破産の方が受け取る額は倍になり、小規模個人再生は一方的な不利益になる可能性があります。
そうした貸し手側の一方的な不利益を防止するために、「清算価値保障の原則に反しない」という制限が設けられているのです。
Aさんの場合、最低弁済基準額は100万円ですが、実際の再生計画で支払う総額は200万円になります。
自己破産した場合、支払う金額が200万円だからです。
給与所得者等再生での返済金額はこう決まる
給与所得者等再生でも、法律で、返済しなければならない金額が決められています。
・・・給与所得者等再生では、可処分所得の2年分以上か、最低弁済基準額のどちらか多いほうを支払わなければならない
最低弁済基準額(返済しなければならない金額)は、小規模個人再生のところで説明しました。
利息制限法に基づいて引き直した借金総額から、この金額は簡単に計算できます。
「可処分所得」は「自分で使うことのできる収入」ということで、次のように計算します。
可処分所得=収入-(税金+社会保険料×最低限の生活費)
このことからおわかりのように、2年分の可処分所得の計算には、収入、税金(国税と住民税)、社会保険料、最低限の生活費などの2年分の金額を知る必要があります。
これらの金額は、次のような書類を見れば知ることができます。
- 収入・・・源泉徴収票の「支払金額」
- 社会保険料・・・源泉徴収票の「社会保険等の金額」
- 国税・・・源泉徴収票の「源泉徴収税額」
- 住民税・・・「納税証明書」(ただし、住民税は前年度の収入に基づいて計算されるため、年度には注意が必要)
- 最低限の生活費・・・地域、年齢、扶養家族などにより、政令で決められている
これらから2年分の可処分所得を計算し、最低弁済基準額と比較します。
その結果、多いほうの金額が返済しなければならない金額になります。
給与所得者等再生でも、返済額は自己破産と比較される
給与所得者等再生の返済額でも、いまの計算で終わらないケースがあります。
給与所得者等再生でも、次のように決められているからです。
・・・給与所得者等再生でも、再生計画案による返済額は、破産で支払われる額以上を支払わなければならない
もうおわかりかと思いますが、小規模再生と同じように、こちらの個人再生でも「清算価値保障の原則に反してはならない」とされているわけです。
ここも、わかりやすいケースで説明しましょう。
Bさんは5社から借り、引き直した借金総額が450万円あったとします。
この場合、最低弁済基準額は100万円です。
Bさんの2年分の可処分所得を計算すると、150万円ありました。
2年分の可処分所得のほうが、最低弁済基準額より多くなっています。
この場合、Bさんが返済しなければならない総額は150万円になります。
特別の資産がなければこれでOKなのですが、資産があると話が違ってきます。
仮に、Bさんに200万円の資産があったとします。
自己破産すると、この200万円の資産は現金化され、貸金業者に分配されます。
比較してみるとこうなります。
- 給与所得者等再生の最低弁済基準額・・・100万円
- 2年間の可処分所得・・・150万円
- 自己破産した場合、業者に支払われる額・・・200万円
清算価値保障の原則がなければ、返済額は、最低弁済額より多い2年間の可処分所得の150万円になります。
しかし、自己破産した場合、Bさんの200万円の資産は処分され、5社への分配に回されます。
このため、給与所得者等再生でも、Bさんが最終的に返済しなければならない総額はもっとも額の多い200万円になるのです。
このとき、どういう資産が対象になるかがポイントです。
対象になる資産は、自己破産したときに処分される資産です。
そうした資産には、99万円を超える現金とか評価が20万円を超える不動産などがあります。
小規模個人再生でも対象になる資産は同じです。
ローン中でも個人再生はマイホームを手放さずに利用できる
先に説明した個人再生のメリットのうち、マイホームを手放さずに利用できることは大きなメリットになります。
・・・どちらの個人再生でも、住宅ローン中のマイホームを手放さずに利用できる「住宅ローン特則(住宅資金貸付債権の特則)」がある。ただし、住宅ローンの減額はない
とは言え、どんな場合でも、この住宅ローン特則が利用できるわけではありません。
住宅ローン以外の抵当権が設定されている場合、この特則は利用できないことになっています。
また、住宅ローンの支払い状況によっても決まってきます。
まず、あなたに住宅ローンの滞納がない場合です。
この場合、特則を利用するためには、次の二つの条件を満たす必要があります。
- 住宅ローン以外に、毎月、再生計画案の返済額を支払うことができる
- 住宅ローンの支払いをつづけることができる
そこで、個人再生を申し立て、住宅ローン特則を利用しようとする場合、3年間の毎月の支払額はどうなるでしょうか。
・・・特則を利用した場合の月々の支払い額=住宅ローン+再生計画案の支払額
もし、毎月支払うこの金額が用意できなければどうなるでしょうか。
残念ですが、住宅ローン特則は利用できません。
現状のローン支払いが厳しい場合、返済期間の延長が認められることもあります。
ただし、延長期間は10年以内で、延長後の最終返済時に満70歳以下であることなどの制限があります。
普通、住宅ローンはかなり長期のローンを組んでいます。
返済期間を延長して制限内でローンが完済できる見込みが立つかどうか、微妙なケースが多くあります。
ローンに滞納があっても、この条件がOKなら特則が利用できる
いまの話は、住宅ローンに滞納がないケースです。
「住宅ローンに滞納があるけど、できればマイホームは守りたい。手放したくない」
こう思うのは人情です。
この場合、次の3条件を満たせば特則が利用できます。
- 住宅ローン以外に、毎月、再生計画案の返済額を支払うことができる
- 住宅ローンの支払いをつづけることができる
- 保証会社の住宅ローンに肩代わり(代位弁済)から6ヶ月以内である
(1)と(2)は滞納がない場合と同じで、(3)が新しい条件です。
住宅ローンの貸付で、銀行などは保証会社にローン支払いの保証をさせます。
住宅ローンの保証会社には、信用保証協会や各銀行系列の保証会社があります。
住宅ローンが支払えなくなって一定期間がすぎると、銀行などは保証会社に住宅ローンの残り分を請求します。
その請求に応じて、保証会社は住宅ローンの残り分を肩代わりします。
これが「代位弁済」で、債権者は銀行から保証会社に代わります。
住宅ローンの肩代わりから6ヶ月をすぎると、住宅ローンの債権者が保証会社に代わることが確定します。
・・・住宅ローンの滞納があっても、住宅ローン特則を利用したければ、保証会社が住宅ローンの肩代わりをして6ヶ月以内に個人再生を申し出る
ここで再生計画が認められると、保証会社のローン肩代わり(代位弁済)がなかったことになります。
つまり、銀行などの元の住宅ローンの債権者に支払いをしていけばいいのです。
もう一つ、気をつけなければならない点があります。
住宅ローンの支払いが遅れていると、まず未払い分があります。
延滞利息や、契約によっては損害金が発生するケースもあります。
こうした未払い分などの処理が問題になるのです。
・・・再生計画が決定するまでに、未払い分や延滞利息、損害金などを全額支払うメドを立てなければならない
メドが立たなければ、残念ですが、住宅ローン特則は利用できません。
住宅ローンの支払いが滞るような状況でしょうから、こうした負担はそう軽いものではないかもしれません。
滞納があって住宅ローン特則の利用を考えるなら、親族などに援助を求めることを考えてもよいでしょう。
よくよく事情を話し、再生計画が確定するまでに支払いのメドを立てるようにしてください。
途中で返せなくなっても、事情によっては救済措置がある
返済額が確定すると、返済計画にしたがって支払いをつづけます。
無事に返済が完了すればいいのですが、途中で返せなくなる場合もあります。
こうしたことがないように返済計画には慎重のうえにも慎重を期す必要があるのですが、人生には何があるかわかりません。
慎重な返済計画であっても、返せなくなるケースは絶対にないとは断言できません。
返せなくなるケースには、いろいろな事情があるでしょう。
なかには、やむをえない理由があることもあります。
・・・返せなくなった事情にやむをえない理由があれば、2年を超えない範囲で、支払期間の延長を申し立てることができる。ただし、決まっている返済額の減額はない
やむをえない理由にはリストラや病気、年収減などがあります。
理由に厳密な基準はなく、業者などが支払期間の延長に同意するかどうかがポイントになります。
支払期間の延長が認められれば、当初の支払期間が3年であれば5年(5年であれば7年)まで延長できることになります。
減額はありませんが、返済期間の延長が認められると、月々の返済額がそれだけ少なくなります。
もう一つ、支払期間を延長しても返済できそうにないケースで、特別のケースもあります。
自己破産と同じように、返済が免除される免責が受けられる道が開かれているのです。
この免責を「ハードシップ免責」といい、申し立てるには、次の4つの条件を満たしている必要があります。
(1)返済している人に瀬金のない事情で、支払いが非常に難しくなった
どういう状態を支払いが非常に難しくなった状態というかはケースバイケースです。
(2)すでに返済額の4分の3以上を返済している
返済がほぼ完了したといえる程度の返済実績が、返済額の4分の3以上ということです。
(3)免責しても、債権者の一般の利益に反しない
言葉を換えると「破産したときの分配以上の返済が終わっている」ことになります。
(4)返済計画の変更ではまかなえない
ハードシップ免責の申し立てがあると、裁判所は業者などの意見を聞いて免責するかどうかを判断します。
免責が確定すれば、残っている借金の支払いが免除されます。
理由なく支払いを怠ると、再生計画の取り消しも
いま、返済計画にしたがう支払いがむずかしくなったときの救済措置をご説明しました。
こうした救済があるとはいえ、あくまで条件がついていることを忘れてはいけません。
もし、支払いがむずかしくなったとして、理由なく支払いをしないとどうなるでしょうか。
こうしたケースでは、ペナルティが課せられることになります。
・・・貸金業者は、裁判所に再生計画の取り消しを申し立てることができる
これがペナルティですが、裁判所が再生計画の取り消しを認めると、再生手続きはなかったことになります。
その結果、再生計画で減額した借金が計画前の状態に戻ってしまいます。
すでに支払っている分は除かれますが、それまでの苦労は水の泡です。
・・・再生手続きが取り消されると、破産手続きの開始決定を受けることもある
個人再生を申し立てて再生計画が認められた段階になると、貸金業者はそう甘くはありません。
再生計画にしたがって返済を始めたら、このことを胸に刻んでおくことです。
2種類の個人再生のうち、どちらを選ぶか?
ここまで、個人再生についてご説明してきました。
個人再生には2種類あり、返済するお金の計算に少しの違いがあることはおわかりいただけたと思います。
- 小規模個人再生が選べる方・・・自営業の方、会社勤めの方、公務員など
- 給与所得者等再生が選べる方・・・会社勤めの方、公務員など。パート、アルバイト、歩合制でも収入が安定していればOKだが、自営業の方は基本的に選べない
「私には大きな資産もない。どちらの個人再生が自分に適しているのか?」
どちらも選べる会社勤めの方や公務員の中に、こんな疑問を持たれた方もあるでしょう。
そこで、どちらの個人再生を選ぶかのポイントです。
どちらを選ぶかのポイントをつかむために、二つの個人再生の違いに目を向ける必要があります。
まず、再生計画案の認められ方に違いがあります。
- 小規模個人再生・・・再生計画案に貸金業者などの2分の1以上か、債権額の2分の1以上の反対がないこと
- 給与所得者等再生・・・業者などの意見に関係なく、再生計画案が認められる
もう一つ、利用の制限の違いがあります。
小規模個人再生では、途中で返済計画が守れなくなっても改めて申し立てることができます。
しかし、給与所得者等再生には、次のような制限があるのです。
- 計画どおり支払いをした場合、再生計画が認められたときから7年以内の再利用はできない
- 途中で返済計画が守れなくなって免責(ハードシップ免責)を受けた場合、元の再生計画が認められたときから4年以内の再利用はできない
- かつて自己破産した人のうち、免責が確定した日から7年以内は利用できない
小規模個人再生では、再生計画に貸金業者からの反対があれば再生は認められません。
しかし、現実的に、業者などの反対はありません。
また、最初から再利用を頭に置くことは感心しませんが、小規模個人再生のほうが再利用しやすくなっています。
返済額でも、給与所得者等再生のほうが多くなるケースが少なくありません。
こうしたことから小規模個人再生を選ぶ方が多くなっています。
どの個人再生があなたに合っているのか、じっくりと弁護士・司法書士などの専門家に相談して、適切なアドバイスをもらうようにしましょう。
-
【債務整理】ウイズユー司法書士事務所の特徴、評判・口コミ・体験談
闇金問題絡みの債務整理を得意とするウイズユー司法書士事務所の特徴・評判・口コミ・体験談について調べてみました。ぜひ参考になさってみてください。 ウイズユー司法書士事務所の概要 任意整理を最も得意とする ...
-
【債務整理】アルスタ司法書士事務所の特徴、評判・口コミ・体験談
闇金問題解決後の債務整理を積極的に取り扱ってくれるアルスタ司法書士事務所の特徴、評判・口コミ・体験談について調べてみました。ぜひ参考になさってみてください。 アルスタ司法書士事務所の概要 アルスタ司法 ...