債務整理の方法には主に四つのやり方があります。弁護士・司法書士などの専門家に相談する前に知っておいて損はないお話をします。
あなたに最適の債務整理は?
債務整理について、四つの選択肢があることは前記事で御理解いただけたと思います。
「では、私はどの方法が適しているのか?どうすればその方法がわかるのか?」
こう思われたはずです。
・・・債務整理の方法は、収入と借金の状況によって考える
この方法が債務を整理するベストの選択と考えます。
では、一つ一つ見ていきましょう。
(1)まず「特定調停」を考えてみましょう
特定調停は、任意整理と同じように債務者と債権者の話し合いで解決しようという方法ですが、裁判所にあいだに入ってもらう点が違います。
裁判所が選ぶ調停委員(民間から2人)と裁判官1人による調停委員会が債務者と債権者の言い分を聞いて、双方が合意できるような和解案づくりを進めていきます。
この場合も「利息制限法にもとづく引直計算」によって借金は減額されますし、一般的な訴訟にくらべて手続きも簡単になっています。
もちろん、特定調停も話し合いですから、任意整理と同じで両者が合意しなければ成立しません。
原則的に、住宅を手放す必要はありません。
調停委員が仲裁に入るとはいえ、基本的には本人が各債権者と話し合う必要があります。
しかも、債権者ごとに交渉をしなければならないため、大変時間と手間がかかります。
裁判所は土日祝日が休廷で、行われるのも一ヶ月に一回程度です。
合意が成立するまでに数ヶ月以上かかり、何度も仕事を休んで交渉する必要があります。
基本的に本人が交渉するものですので、費用は安く抑えられますが、その時間と手間は容易なものではありません。
特定調停が制度として始まった当時はよく行われましたが、最近では特定調停はあまり行われず、「任意整理」を選択する人が多いのが実状です。
「難しくてわからない」という方は、弁護士・司法書士に相談するのが得策と言えます。
(2)次に「任意整理」を考えてみましょう
引直計算をすると、いろいろなことが起こります。
借金がほとんどゼロになることもあり、こうした場合は借金から解放されることもあります。
先述したAさんのように、支払い過ぎていれば、過払い金を取り戻せる可能性があります。
借金が残っても、分割でならなんとか支払えそうであれば、「任意整理」が適しているかもしれません。
目安は、残った借金を原則3年(36回)で返済できるかどうかです。
原則的に、財産は処分されず、住宅を手放す必要もありません。
任意整理は、他の手続きと違い、裁判所を通さずに業者と交渉します。
そのため、普通は交渉のプロである専門家(弁護士や司法書士)に依頼し、交渉してもらうことになります。
(3)次に「個人再生」を考えてみましょう
引直計算をしても、かなりの借金が残る場合があります。
3年(36回)の分割にしても支払いきれそうにない場合、個人再生が次の候補になります。
個人再生での返済額は、引き直した後の借金総額によって法律で決まります。
目安は、その返済額が原則3年(36回)で支払えるかどうかになります。
財産は処分されませんが、評価額金額を支払う必要があります。
支払中の住宅ローンを抱えていても、個人再生では、住宅を手放さずに手続きが進められます。
ただし、住宅ローンは減額になりませんし、一定の制限もあります。
個人再生は、裁判所を通した手続きになりますので、弁護士・司法書士に依頼することになります。
ただし、司法書士に依頼する場合には、債権者一社当たりの債務額が140万円以下に限られます。
140万円以下の制限を超えない場合、司法書士に依頼することができますが、裁判に発展すると厄介です。
140万円以下の訴訟の第一審では司法書士が代理人を務めることができますが、債権者が控訴してきた場合、第二審に移り地方裁判所以上の上級裁判所で裁判が行われるため、司法書士は代理人を務めることができません。
そのため、裁判を見越した案件であると明白に分かっている場合なら、最初から弁護士に依頼するのがベターでしょう。
(4)それでもダメなら「自己破産」を考えましょう
引直計算をしても借金が多く、将来の収入で返済しようにも返済が困難な場合の選択です。
こうした場合、すでに説明した通り、免責が認められれば借金が免除されます。
その代わり、一定の資産(20万円以上の資産と99万円を超える現金)があれば、それらを手放さなければなりません。
免責が認められれば原則的に借金はゼロになりますが、財産は処分され、住宅も手放すことになります。
自己破産は、重大な決断ですので、特に親身になって相談してくれる弁護士・司法書士に相談することをおすすめします。
まず、あなたの借金を一覧表に書き込んでみよう
どの債務整理を選ぶにせよ、「借金の現状を把握すること」がスタートです。
その最も簡単な方法が「債務一覧表」をつくることです。
決して楽しい作業ではありませんが、債務整理のスタートとして、できるかぎり正確な表を作りましょう。
専門家に相談する場合でも債務一覧表があると時間が省け、早く本題に入ることができます。
債務一覧表には、次のようなことを記入します。
(1)借金している相手の名前、住所(支店名)の全て
この場合、借りている業者はすべて書きます。
「こんなに借りているのか」と思われるのがイヤで、一部の借金を隠そうとする人もいます。
その気持ちもわからないわけではありませんが、過払い金を逃さないためにも、あとで面倒な事態を招かないためにも、借りている相手はすべて書き出すことが基本です。
(2)現在の借金残高
借金残高は、すべてを記入します。
少なく書いても意味はありません。
現状を正確に知るため、ありのままを記入します。
消費者金融や信販会社などの場合、とりあえず業者が主張する借金残高でかまいません。
(3)いつから借り始めたか
貸金業者といちばん最初に取引を開始した時期です。
この時期によって、過払い金が起きているかどうかの可能性がだいたい判断できますし、実際の引直計算で確認します。
最初の契約書が取ってあれば正確な年月日がわかりますが、ハッキリしない場合は「平成〇年頃」でもかまいません。
あとで取引履歴の開示を求めれば、取引をはじめた正確な年月日を知ることができます。
(4)いつまで支払っていたか
最後の返済をいつ行ったかです。
このことで、滞納期間がわかります。
この債務一覧表をつくるとき、正確なことが分からない場合があるかもしれません。
そうした場合、個人信用情報機関に問い合わせる方法があります。
個人信用情報機関では、いろいろな金融機関と取引した時点で個人の信用情報が登録され、その情報は5~7年間保管されます。
弁護士や司法書士に相談されれば、あなたの信用情報を業者や各個人信用情報機関に問い合わせてくれます。
記入する借金は、消費者金融などからの借金だけではない
この債務一覧表で注意していただきたいことは、「借りている相手の名前」と「現在のすべての借金残高」です。
どの債務整理を選ぶかの前に、消費者金融や信販会社だけでなく、すべての借金をオープンにした上で専門家に相談することが大切です。
債務整理では借金の全体像をつかむことが重要です。
そのために、どんな借金でも書き出す必要があるのです。
消費者金融や信販会社からの借金は隠さずに書いた上、次のような借金も一覧表に記入してください。
- 銀行や信用金庫、信用組合、労働金庫からの借金
- 支払中の住宅ローン
- 支払中の自動車ローンや商工ローン
- リボ払いで買い、まだ完済していない商品ローン
- 誰かの保証人になっていれば、その補償額
- 会社や友人、親戚からの借金
- 滞納している家賃、電話料金・携帯電話料金、光熱費など(これらを挙げる理由は、法律上、これらを滞納すると借金とみなされるからです)
借金にはいろいろあるということですが、借入先と現在のすべての借金をハッキリさせることで、借金の全体像がつかめます。
相談を受ける弁護士・司法書士は、あなたの身方です。
信頼してすべての借金をオープンにすることで、あなたに適した債務整理の方法を検討するスタートが切れるのです。
債務一覧表には、完済した業者も忘れずに記入する
この債務一覧表で、もう一つ気をつけていただきたいポイントがあります。
それは、すでに支払いが終わっている業者があれば、その業者についても書くことです。
一覧表をつくるとき、どうしてもいま借金が残っている業者に頭がいきがちです。
しかし、完済した業者も絶対に忘れないことです。
「なぜ、完済した業者を一覧表に記入しなければならないのか?」
という疑問を持たれた方もおられるでしょう。
・・・完済した日から10年以内であれば、過払い金の返還請求ができる
これが答えです。
完済した業者があれば、一覧表に次のようなことを記入します。
- 業者の名前
- 完済した借金額
- いつから借り始めたか
- いつ完済したか
完済していれば、当然、元本はゼロになっています。
完済までに支払った利息は、出資法による高利の利息だった可能性が高いはずです。
引直計算をすると、まずほとんどが利息を支払いすぎている状態です。
支払いすぎた利息は元本の返済に充てて計算されますから、支払うべきだった利息はさらに少なくて済む計算になります。
・・・長期にわたって返済を終えた場合、かなりの過払い金が発生している可能性がある
完済から10年以内であれば、過払い金は取り戻せます。
完済していても、取り戻せるお金は取り戻しましょう。
完済から10年経過しているような場合は消滅時効となって取り戻せないこともありますが、取引によっては取り戻せます。
借金を完済すれば、明細書で完済が確認出来ます。
しかし、ほとんどの人は完済を証明する明細書を保存していません。
返し終えた安心感もあれば、完済した明細書を処分してしまえば、家族に知られることもないからです。
どの業者に完済したか、ハッキリしないこともあるでしょう。
その場合でも、業者名と借り始めた時期くらいは覚えておられるでしょう。
あとで取引開示を求めれば、さかのぼっていろいろなことを知ることができます。
以上のことを、弁護士・司法書士などの専門家に相談する前に知っておくと、より充実した相談ができることと思います。
決して難しく考えることはありません。
一つ一つじっくりと、あなたのペースで解決していきましょう。